桜うどんの記録的な

ゲームだったり稀に書く小話だったりをただひたすらに書き連ねるだけ

テーマ「時間の流れ」

友人が書いていた小説と同じテーマで僕も書いてみた。って言うのも僕がいつも読ませてもらうばっかじゃ癪だからって理由だったんだよね。
その彼がブログっていう形で公開したんだから僕も公開すべきかなぁと。公平さを求めるんだからこれくらいすべきだよね!(謎の正当化)

まぁ色々至らぬところも多いですが目を瞑って頂けると幸いです…






カチッ…カチッ…
静かな部屋に等間隔に時を刻む音だけが鳴り響く。草木も眠る丑三つ時…と言うにはまだ早い、人が「深夜」と呼ぶであろう時間帯。
午前0時34分。
多くの人はこの時間帯には夢の中にいたいと思っているだろう。実際はどうなのか知らないが、少なくとも「この部屋の持ち主」はそう思っているようだ。
私、僕、俺、あたい…一人称など気にする必要はないか、無難に「私」で語ろう。
「私」は現在の時間を「私」を見る人に伝える道具。人々からは「時計」と呼ばれる存在。

「私」がこの部屋で活動を始めて、はや数ヶ月。これだけの時間があればその部屋の持ち主の人間性は把握できる。
この部屋持ち主はどうやら「学生」というものらしい。
月の日から金の日…彼の言う「平日」という日にのみ、決まった時間に起き、決まった服を着て、決まった時間にどこやらへと旅立つ。
その日のうちに帰ってくるが、その時間はバラバラ。彼が部屋の外で何をしているのか、何処にいるのかなど知る由もない。
「私」はこの部屋から出られないし、出る気もない。これは紛れもなく「私」が望むことだからだ。この部屋の持ち主に捨てられない限り、「私」はこの部屋、この位置で時を刻み続けるだろう。

そんな話はどうでもいい。今この部屋の持ち主が今何をしているか。
「私」が物思いにふけている内にいつの間にか時刻は午前1時54分になっていた。
流石にこの時間まで起きている人間は少ないだろう。
この部屋の持ち主は、その少ないと思われる人間のうちの1人だ。
部屋の照明を落とし、手に小型の端末を持ち、なにやら指を忙しそうに動かしている。
何も今日に限ったことではない。昨日も一昨日もその前も、ここ1ヶ月と少し、このような生活が続いているのだ。
平日であってもそれは変わらない。彼が制服を着ることも決まった時間に起きることもない。毎日が土の日、日の日になったようだった。
…部屋が完全な闇に包まれた。本来この時間帯にこの部屋があるべき姿に戻った、とも言える。つまり彼が眠る、ということだ。
時刻は午前3時48分。
昨日より1時間17分早い就寝だ。
それを確認すると「私」も意識を深い深いどこかへと預ける。自分で動けないからと言って睡眠が不要な訳では無いのだ。
こうして「私」は眠りへと誘われる。
時刻は午前3時53分。

彼が起床する気配を感じて「私」は目を覚ます。
時刻は午後0時12分。
目を覚まして少しすると、乱暴にこの部屋の唯一の出入口…ドアが叩かれる音が鳴り響く。
それと同時にドアが開け放たれ…彼の母親が顔を覗かせる。その顔はどこか呆れているようだ。
そしてそれに応えるように彼が目を覚ます。
時刻は午後0時17分。
無言で起き上がり、そのまま開け放たれたドアを潜り部屋から出ていく。
ここ1ヶ月の見慣れた光景だ。どうやら彼は「夏休み」という休暇を得たらしく、その「夏休み」とやらを得た者は毎日が土の日、日の日へと変わってしまうらしい。
彼はかなり遅い朝食…いや昼食と呼ぶべきか…を済ませると着替えを始める。
時刻は午後0時24分。
友人と遊びに行くらしい。動きやすい格好へと着替えると、手短に支度をして部屋を出ていってしまった。

時は飛んで時刻は午後4時38分。
彼の母親が彼の服を持って部屋へと入ってくる。特に何をするわけでもなく、ただ机の上にそれを置くと、ドアを閉めて出ていってしまった。その間わずか1分。

午後6時21分。彼が帰ってきた。
荷物を乱雑に投げると、そのまま部屋を出ていった。夕食を食べているのか。

午後7時44分。いつもなら寝床に寝転がり、スマートフォンと呼ばれる小型の端末を操作するはずだったが彼の行動はそれとは違った。
鞄から紙の束を取り出し、机の上に並べる。ペンを手に取り、忙しく紙の上に走らせる。
今日は8月31日、どうやら「夏休み」最後の日のようだ。
なにやらその「夏休み」期間中にも仕事が与えられていて、それを今日終わらせる予定らしい。
彼がペンを走らせる音、スマートフォンから流れる音、そして「私」が時を刻む音。
普段よりひとつ多い音の中で、彼の表情が消える。
無心でペンを走らせる彼を見て、「私」ができることは何か。必死に考えた。
結論、特にない。
そう結論付けた「私」は時を刻むことに集中した。

そうしてどれだけの時が経っただろうか。彼がペンを走らせるのをやめ、滑り込むように寝床へと飛び込む。
気がついたら時刻は午前4時16分。
どうやら彼は「夏休み」の仕事を終えたらしい。
こうして彼は再び眠る。
時刻は午前4時39分。
後を追うように私も眠る。午前4時44分。
不吉な時間に眠ったな、と今は思ったが些細なことだろう。

これが「私」の、彼の夏休み最後の日だった。






以上ですここまで読んで下さった方、いらしたのであれは本当に有難う御座いました…
ではこの辺で。また次があれば次でお会いしましょう!!